敵国騎士と命懸けの恋
お医者様が病室を出て行くと、颯真が立ち上がった。
腕組みをして真一文字に口を結んでいる。何かを考えているような、怒っているような…。
「俺のスープに毒は入っていなかった」
「そうでしたか…」
囁くような声になってしまった。しばらく大声は出せないかもしれない。けれど身体の痺れはとれたようだし、軽傷で済んだことに感謝しないとね。
颯真のスープに毒が混入されていないと言うのなら、やはり私だけを狙った犯行だ。良かった…巻き込まずに済んで。
「自分が毒に侵されている時に、他人の心配する余裕がよくあったな」
「私、毒には耐性があるのです。幼い頃から毎日少しずつ飲んで、身体に慣れさせていました。毒を盛られた時に助かるようにと乳母が私を鍛えてくれたのです」
半信半疑だったけれど、まさに今日がその日だったのだ。乳母に助けられた。もしも帰ることができたならば、一番に逢いたい人だ。
「……」
「でも颯真さんのお皿に毒はなかったのなら、勘違いしてごめんなさい。スープで火傷しませんでしたか」
ああ、余計なことをしてしまった。