敵国騎士と命懸けの恋
ベッドにゆっくりと近付き、黒い瞳が私を見下ろした。
「俺は無傷。火傷を負ったのはあんただ」
鋭い視線が私の腕に移る。
右手首から肩付近まで巻かれた包帯。腕は熱いが、痛みはそれほどでもない気がする。
「本来、騎士である俺が、あんたを守らなければならない立場。それが助けられることになるとは…」
「咄嗟のことで…それにまさかいつも食事を運んでくれていたメイドさんが毒を盛るなんて、想像できませんし…」
「それでも、あんたが俺を助ける理由にはならない」
眉間に皺を刻み、颯真は随分と深刻な表情だ。
お互いに助かったから良いじゃない。そう言ってやりたいけれど、
飛護国王から私の監視役を命じられた以上、監視対象が命を落とすことは彼にとって不名誉なことなのかもしれない。
「ごめん…守れなくて」
止める暇もなく、颯真は深く頭を下げた。
違う。貴方が忠誠を誓う相手は、私でなく国王だ。貴方こそ敵国の姫に頭を下げる理由はないのに。
「止めてくださ…ッ、」
そっと手を伸ばそうと右腕を持ち上げた途端、顔を歪めるほどの激痛が走った。