敵国騎士と命懸けの恋
せっかく笑ってくれたのに、私のお願いを聞いた途端、またしかめっ面に戻ってしまった。
それでも逃げ腰にはなるものか。
「彼女が何故私を傷付けようとしたかは分からないけれど、私は他国の姫よ?怨みを買う理由ならいくつも持ってます。そもそも私が魁王国に来なければ、彼女は実行犯にならずに済んだわ。そう考えると悪いのは全て私。彼女を責める資格はないわ」
「傷つけようとしたのではなく、殺そうとしたんだ。命を簡単に奪える猛毒だった」
「それなら彼女を説得してあげて。いずれ姫は殺されるのだから、自ら手を下す必要はないと。…まぁ飛護国王が帰還したら、あっさり彼女を解放しそうだけど。それでも時間は無限ではないし、一刻も早くーー」
最後まで言い終わらないうちに、颯真の手のひらで口を覆われた。
「もういい、なにも喋るな」
その声は怒りを通り越した諦めだった。
「もっと生きることに執着する姫だと思っていたよ。そうだよな、死を受け入れた方が楽だよな」
「……」
「あんたには、がっかりだ」
彼の言葉は胸の奥に、刃となって突き刺さった。