敵国騎士と命懸けの恋
2ヶ月弱、閉じ込められていた病室から廊下を進み、堂々と正面玄関から城の外へ出た。門番や見回りの騎士には既に話が通っているようで、興味深そうに痛いほど視線を浴びたものの声を掛けてくる者はいなかった。
監視役の颯真の案内の元、城下町に続く整備された道を進む。道の両端には花々が生い茂り、良い香りが漂う。
時折すれ違う者の身なりはよく、この道を歩める者は限られているのだと察した。私もこの道を歩むことは今日限りなんだろうな。
前を歩く背中に声を掛ける。
「颯真、ごめんね」
「主語を言え」
前を向いたまま颯真は淡々と返事をした。
「せっかくのお祭りの日に、私の子守でごめんなさい」
彼にだって一緒に祭りを楽しむ相手がいるはずだ。私のわがままで彼の時間を奪ってしまっていることが、急に申し訳なくなった。明日の私がどうなるか分からないように、颯真にとっても大切な時間だ。
「あんたと居なくても見回りの任務に就き、祭りを楽しむ余裕など無いに等しい。もう何年もそうだから、気にするな」
「騎士はみんなそうなのですか?」
「まぁ子供が居る者は優先的に警備から外されるが、独身の者は有無を言わせず仕事だな」
「恋人と楽しむ時間も無いと?」
「ああ」
そっか…。人が集まる場所ではトラブルが起きやすい。騎士の見回りは必須だろうけれど、国民が楽しんでいる間も仕事だとは理不尽な世の中だ。騎士にも息抜きは必要なのに。
「せっかくの楽しいお祭りを好きな人と過ごせないとは寂しいですね」
忙しい両親に代わり、乳母が連れて行ってくれた祭りや花火大会の記憶は今も鮮明に残っている。眩しくてキラキラとしていて素敵な光景だった。