別れの曲
2.
車窓の向こうを流れる景色を眺めながら物思いに耽っていたら、運転席から何度も名前を呼ばれていることに気がついた。

「おーい。おーいってば。ったく」
「ああ、ごめん。何だったか?」
 
声の主の方へ振り向くと、主は機嫌が悪そうに彼を見た。
 
 「今日のスケジュールの話だけど」
 「ああ、今日は、午前中は雑誌の取材で、午後からはコンサートの打ち合わせ、だったよな」
 「ああ。わかってるならいいよ。取材中はぼーっとするなよ」
 「わかってる。さっきのはたまたまだから」


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