先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「また泣くんだなお前は。もう泣かせたくないと思ってるんだがな…」
「う…だって…」
眼鏡を取られ、涙をぐっと拭かれて両手で頬を挟み上を向かされた。
「花笑、俺の目を見ろ」
そう言われ戸惑いながらも真っ直ぐ航さんの目を見た。
真剣なその眼差しに言葉も出ない…。
「俺が好きなのは花笑、お前だ。どんなに他に女が寄ってこようと関係ない。俺が心底惚れてんのはお前だけなんだよ。…だから、そんな不安そうな顔するな。」
「航さん、私…」
私の不安に気づいてくれた航さん。
強く抱きしめてくれて、また涙が流れる。
「不安も不満も、俺にぶつけろ。最近の花笑は我慢しすぎなんだ。昔みたいに思ったことは何でもすぐ俺に言え」
少しは大人になったつもりで言いたいことを言わずに我慢していたのを見抜かれ、気持ちが溢れてくる。
「…航さん、私自信がなくて不安だったの。たくさんの人たちが航さんに好意を寄せていて、いつかもっと素敵な人が現れて、私捨てられるかもなんて思って苦しくて…ううっ」
「馬鹿だな、そんなわけあるか。何があってもお前を離さねぇよ。」
腕が緩み、顎を掬われ顔が近づいてくる。
「花笑、愛してる。世界中の誰よりも…」
真っ直ぐな言葉と、いつもより優しいキスは私を安心させてくれる。
優しい目は航さんの隣にいていいんだと自信を持たせてくれる。
抱きしめられる腕に私の居場所はここだと示してくれる。
言葉と態度でちゃんと私を愛してくれる航さんがやっぱり好き。
私はもっと強くならなきゃと心に誓う。
航さんの傍でいつも笑っていられるように…。