先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

社員旅行の一見で俺の周りも騒がしくなった。
上司に声を掛けられ労われるのはいいとして、会ったこともない女子社員からも声を掛けられ、人気のない所に連れ込まれ告白される。
最初は丁寧に断っていたが、段々めんどくさくなってきた。
花笑も気が付いてるようでまた暗い顔をするようになっていた。
俺の事に関しては鈍感さを発揮しないのはなぜだ?
しかも二人になっても何も言ってこない。
モヤモヤしながらも自分から言って余計に悲しませる事もないかと何も言わなかった。

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外回りの帰り営業部に戻る途中、リフレッシュルームから出てきた女子社員に声を掛けられた。

「あのっ、山片課長。少しお話があるんですが…」

「なんだ?」

顔を知っている程度の女子社員。何となく話の内容を察して眉間に皺が寄る。

「ちょっとご相談したい事が…ここでは何ですからこちらに…」


そう言って女子社員は廊下の突き当たりまで先立って歩いて行くので、俺はため息を吐き付いていった。
人気のない非常階段の扉を開け入ると、女子社員は振り返り、

「…私、山片課長が好きなんです。お付き合いしてもらえませんか?」

またか…。大きなため息を吐く。

「…はぁ、何を思ってそんなこと言うんだ?あんたとはほとんど接点はないと思うんだが?」

「わ、私は山片課長のことずっと見てきて、素敵だなって思ってました。社員旅行の時のトラブルもかっこよく立ち回って解決したって聞いて、ますます好きになったんです」

全く、誰がそんな噂流してるんだ!
見つけたらぶん殴ってやる!
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