先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
腸が煮えくり返るのを押さえながらなるべく冷静に聞いた。
「…トラブルの解決は俺だけが動いたわけじゃない。変に脚色しているが噂に踊らされてるだけじゃないのか?」
「でもっ、でも好きなんです!」
「っおいっ」
抱き付かれちょっとよろけた彼女の肩を掴んで剥がした時、キィと扉の音と誰かが走り去る足音が聞こえた。
誰か聞いてたな、まあいい。
「悪いがあんたとは付き合えない。こんなこともう止めてくれ。」
「そ、それは好きな人が他にいる、ということですか?」
顔を真っ赤にして聞いてくる。
「ああ、そうだ。」
「…やっぱり、あの噂本当だったんだ…」
小さい呟やきが聞こえた。
「噂?何のことだ?」
「…あの…、山片さんにはずっと好きな人がいて、でも彼女の方は二股してて、振り向いてもらうまで一途に待ってるって…」
「はあ?なんだそのデマは?誰が流してんだ!」
あまりの嘘に怒りがこみ上げる。
「あああのっ、噂なのでっ、私も聞いただけで…」
俺の怒りに慄いて、シドロモドロになってる女子社員に、こいつに言っても仕方がないと諦めのため息を吐く。
「…その噂は間違ってる。強いて言うなら逆だな」
「ぎゃ、逆?」