先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~


「ああ、二股はしてないがな。一途に想われてるのは俺の方だ。10年も前から俺のことだけ想ってくれて、今付き合っている。その彼女を大事にしたい。」

「じゅうねん…」

10年か。自分で言いながら長い年月花笑に片想いさせてきたんだな、と感慨に更けそうになる。

「…そう、昨日今日好きだなんだと言ってるあんたらには到底及ばない。それに…ゲームみたいに誰が俺を落とせるか賭けてるようだが、それももう止めてくれ。迷惑だ。」

「えっ、いやっ…私は…」

言い訳も言えず青くなる女子社員。
賭けにされてると聞いたのは置田からだった。
あいつは人懐っこくて飲み会なんかもあちこち顔を出しているから、女子社員達の噂も聞き付けてくるらしい。

ーーー
「課長、なんか賭けにされてるみたいですよ!難攻不落の山片課長を誰が落とせるかって。」

「なんだそれ?」

「ほっ、本気半分面白半分みたいですけどっ」

思わず眉間に皺が寄り、凄んだものだから置田が声を上ずらせ縮み上がった。
…呆れてものが言えん…。
ーーー

「あんまりふざけたことしてると、賭けに加わってる奴ら全員割り出してシメるぞ!他の奴らに言っておけ!」

低い声で唸るように女子社員に忠告する。

「はっはいっ、ごめんなさい~!」

女子社員は半泣きで返事をして逃げていった。

「はぁ~、これで少しは静かになったらいいんだが…」

何度目かのため息を吐き、頭を振って営業部に向かった。

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