先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「航さんも寂しかった?」

「…ああ、この世の終わりと思うくらい感傷に浸ってた…」

顔を覗き込まれて、思わず目を宙に向け眉をハの時にして一人過ごした時間を思い出す。

「ふふ、大げさ。会おうと思えばいつでも会えるのに。でも、私も航さんに会いたくて帰って来ちゃたから一緒かな?」

「それくらいお互いなくてはならない存在ってことだな。」

顔を花笑に戻せば嬉しそうな顔に自分も綻ぶ。

「嬉しい、ありがと航さん。もう一人なくてはならない存在ができたよ」

そう言い、目線の先にはベビーベットでスヤスヤ寝ている我が子。

「ああ、今日から家族3人だ。旭も花笑も俺が守ってく。子育ても協力する、何でも言ってくれ。花笑、旭を生んでくれてありがとう。」

嬉しそうに笑う花笑の髪を撫で顔を覗き込む。

「そういえば花笑、髪、どうして切ってしまったんだ?きれいな髪だったのに。」

自分の髪を触りながら答える花笑。

「子育てはやっぱり時間との勝負で、あまり自分の髪に時間を掛けてられないの。だから思い切って切っちゃった。どう?似合う?」

「ああ、似合うよ。」

そう言ってすくいあげた髪にキスをした。

「フフ、ありがと。私母親も奥さんも今まで以上に頑張るよ。旭も航さんも私が幸せにする。」

健気に笑う花笑に愛しさが増す。
頬に触れ、花笑の眼鏡をそっと外し見つめ合う。

「愛してる、花笑…」

「私も愛してる…」

久々に触れる唇はお互いを確かめるようにゆっくりと徐々に深くなっていく…

我を忘れるようにキスに溺れ
旭が泣き出すまでそれは続いた。








FIN
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