【完】さつきあめ
「社長が好きでたまらないんだろ。
あの人も残酷な人だよ。レイがそういう風に頑張る奴だってわかってて、黙認して働かせてる。たまにあの人が本当の悪魔のように見えてきてしまうよ、俺には…
でもレイが社長を好きで、社長のために頑張りたいっていうなら、そのやり方を俺が咎めることが出来ないんだ…」

「光は…そんな人じゃないよ…」

わたしの見てきた光はそんな人ではなかった。
だってそんな風に女の子を物としか見ていないのなら、朝日とやっていることはそう変わらないじゃないか。

「ほんとにさくらは社長が大好きだなー…」

「………」

「好きでいるのは一向に構わないけど、あの人にもそういう黒い部分があるって理解しとくべきだよ。
まぁ俺が言いたいのはさ、さくらはレイと同じやり方しても自分で自分の首をしめてるようなもんだし、自分らしく努力していれば、レイよりすごいキャストになれると俺は思ってる。だからもう売り上げとか、レイと自分を比べたりするな。
お前は、お前でいいんだから」

「深海さん…」

その言葉はわたしが誰かに言ってもらいたかった言葉なのかもしれない。

「そんな風に甘い考えでいたら、いつか店長じゃなくなっちゃうかもしんないよ…」

意地悪で言ったら、深海は乾いた笑いを浮かべた。

「もともと店長とか昇進とか言葉に興味がもてないんだ。
どっちかというと黒服のが向いてるな。
俺はどんな仕事の在り方だとしても、女の子には自分らしくいつでも笑って仕事をしてほしいと思ってるだけなんだ。

…きれいごとかな?」

「…きれいごとだよ…」

< 137 / 598 >

この作品をシェア

pagetop