【完】さつきあめ
影で涙を落とすレイに、光は気づいていたのだろうか。
自分の身をうってでも光のために全部を捧げる、そんなレイの愛し方が羨ましかった。
わたしは何かあった時に自分の全てを投げ捨てるほど、彼を愛していただろうか。
誰かのためにそこまで出来る愛し方を、怖いとも感じていた。

それでもなおも自分の身を削り、生きていく。

「レイ、やばそうだねん。2日間お店に来なかっただけでなんかすっごいことになってるし~」

「なんか…可哀そう…」

出勤して、美優と綾乃と話してると、今日は同伴がないのかいつもの覇気が感じられないレイがお店に入ってきた。

「さくら~!可哀そうって!!」

「あれは自業自得ってやつよ。
誰もかれも色恋なんかにハマるやつの気がしれないね」

色恋なんかにハマるやつの気がしれない。
そう綾乃は吐き捨てるように言う。

「でもレイすごいよ~!サイトとかでもめっちゃ叩かれてる~あれはキャストだけじゃなくて客も書き込んでるねぇ」

「サイト」

ほい、と自分の携帯を見せる。

クラブ、シーズンズと書かれているネットの掲示板だ。
話題はレイのことで持ち切りだった。


‘枕女’

‘誰とでもやる女’

‘俺もやらしてもらったぁ!レイちゃんごち!’

‘シャンパンいれたらすぐにやらせてくれる女’

見るのも嫌になるような言葉が並ぶ。 こういうインターネットサイトがあるというのも薄気味悪い。人の悪口で、優越感に浸るような卑怯なやり方は好きになれない。それでも人間の性というものなのだろうか。
悪口のはびこっているこの場所の住人は実にいきいきとしていた。

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