【完】さつきあめ
レイの平手打ちが綾乃へ飛ぶ。
それと同時に綾乃の平手打ちもレイへと飛んで行った。
そんな強い力ではなかったように思える。けれど、レイの小さな体はふわりとその場に崩れ落ちて、床へと叩きつけられるように落ちて行った。

「レイさん!!」

愛し方も人それぞれで、守り方も人それぞれだったこの街で、皆が欲しかったものは手には入らない。
得るものより失うものの方が大きかった。
それぞれに、愛より守りたいものがあった。

小さな女の子。
可愛らしい女の子を形容するものをすべて手に入れているような子だった。
けれど気は誰よりも強くて、壊れそうなものを守るためにいつも孤独で、たったひとり戦ってきたような子だった。

「………なんであんたがいるのよ」

「レイさん!目さめた?!」

レイはお店で倒れて病院へ運ばれた。
検査結果は、疲労だと言われた。
一緒に付き添いに来ていた深海が言っていた。
得意でもない酒も飲めるだけ飲んでたし、プライベートの時間も全部客につかっていた、と。
本当は枕もやりたくなかったはずだ。この仕事は肉体的にも辛くなる時があるけれど、精神的な面でボロボロにメンタルがやられるって。

レイはひとりぼっちでずっと戦ってきた。


「いま、病院です…。深海さんも来てる。あたしも仕事が終わってからきたの。
光にも連絡したから、光も時期に来ると思うよ」

「わーい、光に会えるー!
って言っても、いまレイ、あんたとやりあう程の元気は持ち合わせてないよ…。」

「別にやりあおうなんて…そんな気持ちでここにいるわけじゃありませんから…」

「さくらちゃんはいいよねぇ…」

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