【完】さつきあめ
わたしとあなたが?
驚いたことに、わたしが比べていたように、レイもわたしと自分を比べていた。

「さくらちゃんが羨ましい…
あなたはレイと違って、純粋で優しくて…さくらちゃんみたいに、レイは本当はなりたかった…」

「レイさん、枕なんかやめてよ…。
枕なんかしなくたって、レイさんの接客はすごいと思うし、シャインでもずっと1番だったのはレイさんの実力じゃない!それにあたしたちはライバルだけど、それ以前に同じお店で働く仲間でもあるよ?!」

ふっとレイが小さく笑う。

「そういうところ、本当に羨ましかった…」

大きな音を立ててドアが開いたかと思えば、そこには慌てた様子の光が立っていた。
珍しく息が切れている。相当慌てて来たようだった。
目を覚ましてるレイを見て安心したのか、ふぅーっと大きな息を吐く。
冷たいと思ったり、あったかいと思ったり、光のことを知れば知るほどわからなくなるよ。

「だいじょうぶか?レイ
さくらも来てたんだな」

プライベートな時間であっても、決してふたりきり以外の時は夕陽とは呼ばない。
そういう慎重で、ちゃんとしてる所が大嫌いだった。
レイが倒れてもなお、そんな事を気にしてしまう自分は小さいし、醜い。

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