【完】さつきあめ
「光ってずっとそういう人。
レイあんまり家庭環境良い子じゃないからさ、高校もろくに行かずにふらふら夜の仕事とかしちゃって、人並みにぐれちゃって、でも出会った頃の光は大学生だったんだよ」

「光が大学生?!」

わたしは、光について知らないことが多すぎた。
こうやって、レイの口から聞かされるほど惨めなことってない。

「うん。光はレイと違って、育ちがいいんだ。
…きっとさくらちゃんと一緒だと思う。
レイみたいな人間は光みたいに人に憧れるんだと思うよ。なんてゆーかなー、自分にない物を持ってる人?
光は昔からこんな夜の光りよりも朝の爽やかな光りの方が似合う人だった。
出会った頃からレイの家庭のことや仕事のことすごく心配してくれた人で、ふざけてんのに、真剣になって怒ってくれるただひとりの人だった」

わたしの知らない、光とレイの時間。
積み上げてきた長さが違いすぎるんだ。

「ほんとはね、レイ、夜の光より昼の光の方が好き」

「昼の光…?」

「うん。七色で社長なんかやって鳥かごの中でかたっくるしく生きてる光より、自由になって自分の好きなことやってる光の方がレイは好きだったんだ」

「自分の好きなこと?光はこの仕事が好きじゃないってこと?」

「それはレイの見え方だからわかんない。
光は全然レイには自分のこと見せてくんなかった。お兄ちゃんみたいに優しくしてくれたって、所詮血の繋がりなんてないし、本当は恋人や彼氏とかになるんじゃなくて、レイは光の血の繋がった大切な人になりたかった」

「…わかんないかな?
だってあたし…正直に言うと光と付き合いたいもん…。妹だったら付き合えないし…」

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