【完】さつきあめ
「目指してたもの?」

「はい。あたし、シーズンズでナンバー1になるために頑張ってきたから!」

「え!?じゃあ俺めっちゃ応援するし~早く言えよ~そういう事は~!」

「いや、そんな…そういうつもりで言ったわけじゃなくて…」

そういうつもりじゃなかったら、どういうつもりだったというのだろうか。
わたしはナンバー1になりたかった。
ずっとずっとなりたかった。
心の奥でずっとなりたくて仕方がなかった。
わたしがこう言えば、彼はわたしの望む返答を返してくれるのも知ってたし、どんなにいい子ぶってもそこに何も計算がなかったと言ったら嘘になる。
全部はるなの言う通りだった。
わたしはきっと桜井が本当に思い描くような女の子じゃない。

いつからかそうなってしまったか。
最初からそうだったのか。

「でも、お店の綾乃ちゃんがすごい人だから」

「えー!でも俺さくらちゃんのためなら何でもしてあげたいから
絶対ナンバー1にしてあげるよ!」

優しかったお客さんを変えてしまうのは、女の子自身なのではないかと今にして思う。
それでも、何をしてでも今月は綾乃には負けたくなかった。
わたしに負けないと言いながら、わたしの心配をしてくれている、それはわたしを下に見て、なめられているとさえ感じた。
自分は光の彼女だから。
たとえ、光の彼女は譲れたとしても、ナンバー1だけは譲れなかった。
自分が壊れてしまいそうだったから。
自分の中にこんな汚い感情があるなんて。

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