【完】さつきあめ
シャンパンを開けて、小笠原のグラスに優雅に注ぎ笑った。

「ゆりさん、それじゃあまるで社長とさくらが2人きりで一緒にいたみたいな言い方だ」

普段は全然笑わない。
そんな深海がゆりと小笠原を交互に見て微笑む。

「え?」

「小笠原さん、今日も高級ボトルをありがとうございます。
ちなみに今の話、僕も一緒にいたんですよ。さくらの相談を僕と社長でのっていたんですよ。
ゆりさんの目には僕なんか見えてなかったみたいですね。まぁよく影は薄いって言われます…」

そう苦笑しながら、小笠原に笑いかける。

「へぇ、そうなんだ。深海くんも有明くんとは仲が良いんだね」

「えぇ、今は社長と部下っていう立場ですが、実は社長とは大学が一緒で、僕の方が年下なんですが、在学中もお世話になった人なんです」

「へぇ、じゃあ君もK大学出身なのかい?」

「えぇ、小笠原さんもですよね?社長からお聞きしてます」

「そうなんだ。いやあ、本当に奇遇だなぁ、七色の社員に僕の後輩が2人もいるなんて。
深海くんは学科はどこだったんだい?ちょっとゆっくり話を聞きたいな」

「じゃあ、少しだけお邪魔していいですか?」

光と深海の大学が一緒…。
そんな事も知らなかった。
けれど、こんな忙しいのに、深海がわたしのフォローに回ってくれたのは一目瞭然だ。
深海が話を変えてくれたおかげで、ゆりは何も言えなくなり、小笠原に見えないように強くわたしを睨みつけてくる。

< 225 / 598 >

この作品をシェア

pagetop