【完】さつきあめ
「今は目の前にあることだけ考えろ。
さくら、ナンバー1になりたいんだろ?」

「うん…」

「俺は何となく今日みたいな日が来ると最初さくらを見た時から予想はしてた」

「え?」

「君が、さくらと言う名を望んだ日から…俺がそれを許可した時から」

「ねぇ、深海さん!さくらって」

振り返り、目を細め、懐かい物でも見るような目で微笑みを小さく浮かべる。

「さくら、はこの系列ではある意味タブーの源氏名なんだ。
古くからいる人なら知ってるし、さくらと名付ける事は何となくタブー視されてきた」

「そうだったの?!あたし、なんか適当につけちゃって…」

「さくらは、七色グループを立ち上げた時のONEの最初のナンバー1だった。
ずっとナンバー1で、華やかな女の子で、誰からも愛されるような女の子で

…宮沢さんの昔の彼女だった…」

「そうなの…」

朝日の昔の彼女…。
何となく嫌な予感がしていた。

「俺はいま、君にさくらと言う名前を許した事を後悔してる」

立ち止まり、わたしの顔を神妙な面持ちでじぃっと見つめた。

「君はさくらに似てる。雰囲気だけじゃなくて、顔も背丈も。
最初から何となく感じてたけど、ここまで変わるとは思ってなかった…。俺は…君の…人生を狂わせた張本人かもしれない…」

朝日がわたしに拘る理由は昔の彼女に似ていたから?
果たしてそれだけだったのだろうか。

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