【完】さつきあめ
「あらぁ、深海さん、おはよう。
もっといい写りの写真なかったのかしら?」
「…さくらも綾乃もあれが1番良いと思ったんだけどな…」
出会った頃のように仲が戻ったわけじゃなかった。
むしろわたしから、綾乃へ距離を置いていた。
けれど、わたしがナンバー1になり、綾乃がナンバー2になった。双葉の元ナンバー1の実力は存分に周囲に見せつける形には、なった。
憑き物でも落ちたかのように、今月からはまたマイペースの綾乃の営業に戻った。それに深海は嘆きはしなかった。
先月の締め日の後「思ってた以上だわ」と綾乃は笑った。
今も綾乃と光の関係については聞けていない。
きっとそれを本人の口から聞くまでは、わたしと綾乃は前のような関係には戻れない。
けれど光や綾乃が自分の口から何も言わないのであれば、わたしから聞く権利もないのだと思った。
深海は2人の間にはさくらの思っているような事はない、と言った。
それでも2人を強く繋ぐ、’何か’
その、何か、がいつもわたしを怯えさせた。
先月の異常なほどの綾乃の頑張りは、自分のためでも、誰のためでもない。
光のためだったのが痛いほど伝わってきたから。
「でも、あの看板意味あんの?」
綾乃が深海につっこむと、深海は再びパソコンに目を移し、険しい顔をした。
「どうせ、来年になったらまた看板変わるんでしょう?意味ないでしょ」
「綾乃、あれは会長の指示だっただけだから」
「宮沢さんの?ふーん、でも意味ないでしょ?」
「綾乃ちゃん?意味ないって?」
「あら、さくら知らないの?」
「何が?」