【完】さつきあめ

「光とさくらがお互いを想い合えば、宮沢さんは絶対それを引き離すような真似をする。
もっと現実的な事を言えば、光は七色グループの社長でもいれなくなるし、この街で働けなくなるかもしれない」

「そんな…まさか…」

「そんな事を平気でするの、あの人は。
そうなれば光はいつか自分のお店も持てなくなってしまう。
さくら知ってる?光の夢、光は宮沢さんの下で働くわけじゃなく、本当は自分のお店を持ちたいって」

「そんなの、知らない…」

光は何も話してはくれなかった。
自分のお店を持ちたいって事も、それを綾乃に話してる事も
こんな時にさえ疎外感を感じてしまう、自分の小さな心を恥じる。

「さくらがいることで、光の夢を奪ってしまう…」

深海も綾乃も、誰もわたしたちの事を応援してくれない。
朝日がわたしに拘る事さえ、さくらさんに似てるからという理由で、一時的なものだと思っていた。わたしと光がいつか付き合えば、そんな一時的な感情さえいつかなくなると思っていた。
朝日にとって、わたしという存在は一体なんなのだろう。

「何で、そこまでして…宮沢さんはあたしに拘るの…」

「正確に言えばさくらに拘ってるんじゃなくて、光に拘ってるのよ、あの人は」

「光に?」

「光がさくらを本当に好きにならなければ、あの人はここまでさくらに固着しなかったかもしれないわね。
宮沢さんはね、光を自分のテリトリー内、七色グループにずっと閉じ込めて
光を絶対に離さないで、光に自由を与えたくないの」

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