【完】さつきあめ
「ゆいちゃん~…またその服~?」

ゆいは黒と白のシンプルなタイトなワンピースを着ていた。

「え~…だって気に入る服がないんですもん…あたし自分の気に入った服しか着たくないし~…」

「お給料たくさんもらってるでしょ?もっとお店に行って新しい服をさぁ~…」

「そうは言っても気に入った服ないから仕方がないでしょー?
あ、さくらお疲れ!同伴終わったの?何食べに行ったの?」

嘆く小林を無視して、ゆいはわたしを見つけて駆け寄ってきた。

「今日はお寿司だったよ」

「いいねぇ~!あたしはお鍋食べにいったの~!!
てか店長本当にうるさくって困っちゃう、セットに入れだの、同じ服は着るなだの。こぉいうところがクラブの嫌なところなんだよねー」

「ゆいはあんまり仕事の服買わないの?」

「ケチってるわけじゃないんだよ?自分の着たくない服着るのが嫌なだけ!
去年のクリスマスもサンタのコスプレなんてしたくないから普段と同じワンピース着たら店長うるさくてさぁ…」

そりゃー小林も頭を抱えるわけだ。
けれどゆいの事だ、気合いをいれ、コスプレをしたキャストより指名を取っていたに違いない。
周りに流される事なく自分の信念を貫く事を人は我儘だというかもしれない。それでも彼女が自分のやり方で結果を出してきた事も確かなのだ。

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