【完】さつきあめ
「森田さんね。おっけー」
こうやって前もってリサーチしてる高橋は、やっぱり担当としては優秀で、THREEの副店長に選ばれた理由もよくわかる。
指名の席を回って、同伴の小笠原の席にも着いて、いつも通りの仕事が始まる。
シーズンズと違ったところは、小林も言っていた通りフリーのお客さんもすこぶる多い。シーズンズは良く言えば誰でも手ごろに入れるカジュアルな店だったのだが、やはりそこはTHREEとの客層が違う。
きっと双葉やONEはもっと違うのだろうけど。
少し時間が経ってから、わたしは抜かれ、フリーの団体の席に着くことになった。
見るからにお金を持ってそうな団体の席だ。
高橋がこっそり耳打ちして「あれが森田さん」と言った。
50過ぎの恰幅の良い男性が豪快に真ん中で笑っていた。
ナンバーの子は着けるから、と言った通り凛とゆいが先に席に着いていた。
さくらさんです、とわたしが紹介されると凜はキッとわたしをきつく睨み、ゆいは「さくらだぁ~!」と嬉しそうにわたしの名前を呼ぶ。
森田さんを挟むようにわたしとゆいが座り、凜は少し離れたところに座っていた。
囲まれたお客さんに名刺を渡し挨拶をして、少しだけ2人の接客を見つめていた。