【完】さつきあめ
「いいの、ほんと……。七色にいるの、辛いし…」
言ってしまった後に、凜を傷つけているのに気づいた。
辞めてほしくないのはわたしの自分勝手な考えで、凜は苦しそうな顔をしながらグラスに口をつける。
「ごめんなさい…」
「謝らないで、これでも嬉しいの。
さくらがそこまであたしの事考えてくれるの素直に嬉しい、夜の仕事ってうわべは仲良くしてても、本当の友情で育ちにくいものだって思ってるから
だから自分の事を真剣に考えてくれるのって案外嬉しいものよ」
凛の言葉に胸がちくりと痛む。
本当の友情は育ちにくいもの。
まるでわたしとゆいのようだ。わたしたちはうわべは仲良く見えていたかもしれないけれど、結局本当の友達ではなかった。
本当の友達ならゆいの悪い事は注意すべきだし、光の事もあってか、いつだってゆいに本音でぶつかってなかったかもしれない、だからこそわたしたちは結果こんな事になってる。
「不思議な子ね」
凛の瞳が、わたしの視線を捉える。
「裏の顔ばかり持ってる女の子ばっかりだと思ってずっとこの世界に生きてきた。
でも、あなたは…
それにあたしの話会長としてたなんて、やけに親しそうじゃない」
凜は途端にいつもの意地悪そうな笑顔を浮かべた。
「いや、たまたまこの間会って、お茶しただけですー!」
「ふぅん、あの極悪非道って呼ばれてる会長と仲良くお茶しちゃう仲なんだぁ」
「だからぁ、誤解ですってば…」