【完】さつきあめ
とっさに嘘をついた。
何があるわけでもないけれど、朝日と飲みにきてるなんて言ったら光は気分を悪くするだろう。
もう少し、もう少し待てば光と一緒にいられる。それならそれまで何も波風を立てるような事はしなくていい。

「声が聞きたかったけど、邪魔しちゃわるいな。今日は我慢しとく。
心配だから帰ったらラインしておいて」

と光から返信が着て、画面を閉じる。
ズキンと、胸が痛んだ。その罪悪感というのは果たして光へだったのか、それとも朝日へだったのかはわからない。

席に戻ったら無残にもパンダの顔は真っ二つに切られていて、涼と朝日がお互いにお酒を注ぎ合っていた。
仲がいいのか悪いのか、どっちが酒が強いかなんて話して、なんだかんだ楽しそうに飲んでいたのに安心した。

しかしそんな安心も束の間で。

「ありえないよー!」

お店も終わる、午前さま。
散々飲んで、涼に絡んで、わたしにもぐちぐち言って、朝日は潰れた。
いつものようにお店のソファーに大の字になって、静かにすぅすぅと寝息を立てる。

「あーあー…」

まるで涼は他人事。

「涼も悪いんだよ?!調子にのって宮沢さんに飲ませるから!」

「はぁー?張り合ってきたのおっさんの方じゃん」

「宮沢さんはお酒が弱いんだよー!」

「知った事かよ…」

< 488 / 598 >

この作品をシェア

pagetop