【完】さつきあめ

「やっぱり…一緒にいたの…」

「ゆりさん…」

ゆりのティシャツからのびる細い腕、その手の中に小さな紙袋が握られていた。
いつも朝日がつけている高級アクセサリーブランドのショップ袋だ。

わたしと涼に抱えられて眠っている朝日を見て、ゆりはひどく悲しそうな顔をした。
悲しそうな顔をしても絵になるほど、綺麗な人だ。

朝日が鍵は返してもらったと言った。
それでも朝日の誕生日に、こうやって仕事が終わってからずっと待っていたんだ。
こんな綺麗な人が、こんな朝方まで、たった1人で。
ゆりはわたしが思っていた以上に、朝日が好きだったのだ。

頭の上から、足の先まで完璧な人。
わたしが朝日と一緒にいるところを見て、少し悲しそうな顔をして、すぐにいつもの、気の強そうな顔に戻った。

ショートパンツから見える長い足で、ヒールの音をコツコツと響かせながら
わたしと涼の横を通り過ぎた。

すぐに振り返って、呼び止めた。

「ゆりさん!勘違いしないでください!今日はたまたまで…
あたしと宮沢さんは何も関係ありません!」

コツっと高い音を鳴らし、ゆりの足が止まる。
振り向きはしなかった、だからゆりがどんな表情をしているかはわからない。
ゆりの栗色の長いウェーブのかかった髪が風で少しだけ揺れる。

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