【完】さつきあめ
「朝日の気持ちがたとえどこにあろうと、あたしは七色グループにいる限り、あなたには絶対に負けない…」
わたしは、この人に勝つために七色グループに入った。
けれど、この人は朝日を失ってもなお、わたしには負けない、と言い切った。
たとえ朝日を失おうとも、キャバ嬢としてわたしには負けないと言ったのだ。
なんて強い人だ、と思った。
わたしが同じ立場なら、ゆりと同じようにいれただろうか。
光に辞めろと言われれば、すぐに揺らぐ弱い心で、自分で決めた事ひとつ守れずに、いつも何かに流されている自分を…。
涼は何も言わずに朝日の家の中にずかずかと入っていき、ベッドにおろすと、疲れたように大きなため息を吐いた。
「しかしすげーなー。
迷路みたいに迷子になりそうだわ」
玄関までは朝日の家に入った事はあった。
由真とは少し間取りが違うように感じたけれど、シンプルながら家具の全てが高級品なのは見てすぐにわかった。
掃除なんてするタイプには到底見えないけれど、まるで使われていないかのようにピカピカに隅々まで磨かれている。
朝日を寝室におろした後、リビングにやってきた涼は座り心地の良さそうな黒い皮のソファーに腰をおろし、煙草に火をつけた。
大理石で出来ているテーブルに置かれた灰皿の中には、いつも朝日が吸ってる煙草の吸殻が数本散らばっている。
「えらく綺麗な人だったな。俺あの人見た事あるわ」
「ゆりさん、ね。うちの全部の系列のナンバー1だもん…。看板とか雑誌とかで見た事あるんじゃない?」
「あーなるほどね、噂のナンバー1さんね。どうりで綺麗なはずだわ。
で、あの人がおっさんの元カノってわけ?」
「そうね…」
涼は煙草の煙を吐きながら、目の前に立ってるわたしの姿をじぃっと見た。