【完】さつきあめ
すげー事かはわからないけど、恐ろしく広いキッチンで、料理なんかしないくせに揃いに揃っている料理器具で、目玉焼きとベーコンを焼く。
朝日はカウンターキッチンに座り、にこにことしながらわたしの料理している姿を見ている。
ケーキの件といい、この人は意外なところで子供のような姿を見せる。

「料理しないくせに良い料理器具使ってるんですね」

「あぁ、ゆりが料理好きでなんか勝手に集めてた」

「ゆりさんが?!」

あんなに綺麗で完璧なのに、料理まで出来るなんて。
そこでゆりの事を想いだした。

「昨日ゆりさんマンションの前まで来てましたよ?!」

「え?」

「多分…宮沢さんの誕生日のお祝いに…。プレゼント持ってたし…ずっと待ってたみたいですよ?!」

「あいつ…」

朝日が微妙な顔つきに変わった。
目玉焼きの焼ける、ジュージューという音だけ室内で響いていた。

「連絡した方がいいんじゃないですか…?」

「いや、連絡しない」

「そんな酷い…」

「酷いのは中途半端に優しくする事だ」

朝日がはっきりと言った言葉は正論だった。
わたしに言われたわけじゃないのに、自分のしてる事がたまらなく嫌になる。

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