【完】さつきあめ

「それで、宮沢さん!THREEは大丈夫そう?!」

「あぁ、まぁ…1人どーしても頼みたくなかった奴にも頼んだし…」

ばつの悪そうな顔で、朝日が言うと
わたしたちの後ろから声がした。

「頼みたくなかったやつって失礼ね」

煌びやかなドレスに身を包んだ。
年齢は20代後半だろうか、大人ぽい。
スタイルが良くて、性格のきつそうな美人。見るからに派手そうで、朝日のタイプの女そのままだった。

「さくら、こいつとは仲良くしなくていい」

「さくら?へぇ~…七色で源氏がさくらかぁ~。へぇ~?」

きつめの美人の女は、わたしを上から下まで舐めるように見る。

「仲良くする必要なし」

「ふぅ~ん。ゆりと別れた理由はこれ、ですか?

どぉも~!今日からTHREEに出勤することになった菫っていいます~!さくらちゃんよろしくね~!」

「菫?!」

その名前にすぐピンときた。
菫。スミレの花。
THREEの名刺に刻印されてるのはスミレの花だ。
いつか高橋が言ってた。朝日が歴代の自分の彼女の源氏を花の名前にするのが好きだということ。
そして、その花の絵柄を名刺に刻むことも。


「宮沢さんの元カノ?」

はっきりと言うと、朝日は明らかに落胆したような顔をして肩を落とした。
菫は可笑しそうにけらけらと笑う。

「はーい、朝日の元カノでぇーす!
て言っても付き合ってたのは随分昔だけどね。
今は結婚して主婦やってんの。朝日にどーしてもって頼まれたから復帰しちゃいましたー」

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