【完】さつきあめ

綺麗な見た目に反して、話しやすそうな人だった。
それにしても朝日の好みのタイプは統一されすぎている。
可愛らしいタイプの女は絶対選ばす、綺麗だけどどこかきつそうな女が好きな人だ。

「お前うっせぇよ。あっちへ行ってろ」

「はーい、怖い怖い。
さくらちゃん後で話そうね~」

「あ、はい…」

菫は高橋と小林と何やら楽しそうに話している。
結婚して主婦をやっているとは思えないくらい綺麗な人だった。

「綺麗な人ですね…。元カノさん。宮沢さん好みが統一されすぎてます…」

「お前までうるせーなぁー…。まぁあいつはそう悪い奴じゃねぇから…でもあんまり仲良くすんな。
俺の昔の話とかしたら殺す」

「殺すとか物騒な…」

「今好きな女に昔の俺の事なんか知られたくねぇんだよ。お前ら女は勝手に話盛るからな」

今好きな女、と朝日は照れもせずに平然と言った。
この人はさらりと恥ずかしい事を言ってくれるものだ。
その一言一言にわたしがどれだけ動揺するのか知っているのだろうか。

「宮沢さん。あたしも涼にお客さんでお店で働きたい子いるか聞いてみるね」

わたしの言葉に朝日はやっぱり仏頂面で、ふんっと言って顔を背けた。

「涼ならきっと協力してくれると思う!
それに綾乃ちゃんやはるなちゃんや深海さんもシーズンズを守ろうとしてくれてる。
大丈夫だよ!宮沢さんの大切にしてきたお店、絶対潰さないよ!」

その言葉に朝日の顔が歪み、わたしへと背中を向けた。

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