【完】さつきあめ
「さくら、美優が明日からレギュラーで入ることになったから」
朝日がお店から出て行って、高橋にすぐ告げられた。
「え?!」
「あいつ昼職辞めたらしいんだよ」
「何も聞いてないよ!!」
美優はお昼も仕事をしていて、夜はアルバイトだった。
夢を叶えるために掛け持ちで仕事をしているような女の子だった。
わたしがシーズンズからTHREEに移る時も、一緒に来てくれて、いつも悩みも聞いてくれていた。
「高橋くんはよく七色に残ったね…。光から誘われたでしょ?」
「まぁね。でも俺が信頼してる人って結局深海さんだから。
深海さんが社長についていくならもしかしたら行ってたかもしれない。
でも俺は深海さんを尊敬してるし、宮沢さんの事だって尊敬してるって言ったろ?それにさくらと一緒に働きたいって思ってる。俺さ、お前と一緒に働いていて、ずっと見てきてさ。お前が1番になる姿をどうしても見たいんだよな」
「高橋くん…」
「それにさくらは何となく七色に残ると思ってた」
「え?」
もうこの人とも1年以上の付き合いになるんだ。
同い年で、いかつい見た目で、女の子をよく見てる人で、この人にも何度も助けられた。
「さくらは気づいてないかもしれないけど…お前さ…」
高橋の鋭い眼光がわたしをとらえる。
次に言われようとした言葉が何となく怖くて、視線を逸らす。
「高橋くーん!」その瞬間、小林の高橋を呼ぶ声がフロアに響く。 それに安心してる自分がどこかにいたんだ。
わたしをずっと見てきた人なら、少しずつ変わっていくわたしを知っていたはずで。