【完】さつきあめ

確かに昔のわたしは光が全てだった。
でも今は違う。
自分を応援してくれるお客さんや、信頼してくれる仲間もいる。

「美優ちゃん、ありがとう…」

「何が~?それにあたし、七色でトップになるさくらを見たいんだよ~!」

更衣室に入ると、やっぱりいつもよりキャストが少ないと感じた。
鏡台で菫が化粧直しをしていた。

「さくらあの人誰?新しい人?」

美優が耳打ちをしてくる。

「宮沢さんの元カノらしい…。宮沢さんが呼び寄せたみたい…。菫さんって言うんだって」

「え~!会長の?!びっくり~!綺麗な人だね、やっぱ…」

「うん。あの人って好みのタイプ統一されてるよね」

美優がわたしを見て、くすりと笑う。

「そうかな~?会長は影のある美人が好きって感じだけど、さくらはどっちかっていうと熱いし、感情も真っ直ぐ表すタイプだけどね」

「べ、別に宮沢さんはあたしの事なんて…」

今好きな女に、という朝日の言葉を思い出す。
感情を真っ直ぐに示すのなら、朝日もだ。 そう考えて見れば、わたしと朝日は少し似ているのかもしれない。

「さくらちゃん、改めてよろしくね。
隣の女の子は?」


椅子から立ち上がり、菫は上品な笑顔を見せた。年齢的なものだろうか、それとも今まで培ってきたものなのだろうか。
落ち着いていて、なおかつ力強い。やはり少しだけ雰囲気はゆりに似ている。

「美優でぇす!よろしくお願いします」

「美優ちゃん?可愛い子ね。あたしは菫です。よろしくね」

「あの、会長の元カノさんって…」

美優はストレートだ。その言葉に菫は声を出して大笑いした。

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