【完】さつきあめ
「いやいや、たまにホール見回して飲むのも悪くないよ。
というかゆりから色々話は聞いてるんだ。有明くんがお店を辞めたってことも」
小笠原はまるで申し訳なさそうに聞いてきた。
「はい…。何人か女の子社長についていっちゃって…」
「君ももしかしたら辞めるかもって思った」
小笠原の言葉は、相変わらず人を見透かすようだった。
それでも出会ってからこの人のそういうところに嫌な気持ちを感じた事はない。
「あたしは七色で目標を持って仕事をしていますから」
小笠原のグラスに氷を落とすと、精いっぱいの笑顔を向けた。
わたしの笑顔に、優しい小笠原の笑顔がより一層優しくなる。
「どうしました?」
「いや、1年前とは違った目をするようになったと思って」
「えぇ?!」
「いや、いい意味で変わっていくなぁと思って。
シーズンズにいて、THREEでもナンバー1になって、君は日に日に貫禄が出てきた」
「小笠原さんはうまいから…。何にも出ませんよ~?!」
「はは、でも根本は変わっちゃいない。
君の瞳はいつも真っ直ぐだ」
変わらないのは小笠原で、こうやって1年前と変わらずに指名し続けてくれる事が嬉しい。
「有明くんの事だ。きっと良いお店を出すとは思うけど…。少しだけ心配でもあるかな…。
経営はそう簡単な事でもないからね」
「そうですよね…」
光は上手くいくのだろうか。人として女の子と上手くやっていけれる人だとは思った。
それでも経営となると、小笠原の言う通り話は別だろう。