【完】さつきあめ
菫の意見には同意だ。
ゆりの立場はきつい。
頑張っても、いくら頑張ったとしても自分にはもう振り向いてくれない人間のために、何故そんなに頑張れるんだ。
そう思った後、それは愚問だと思った。
わたしだって光に想いが届かなかった夜を何度も超えてきた。
ひとかけらの希望が捨てきれなくて。
着替えが終わり、久しぶりに美優と飲みに行こうということになった。
美優はこれからは朝まで飲めるーとはしゃいでいたが、これでいいのだろうか。
美優の夢は違う場所にある。彼女にとって夢に必要な金額はもう稼いだのだろう。
それでもなおもTHREEに残ってくれている。
言葉には出さないけど、美優はわたしの1番のヘルプとして出会った時から動いてくれていた。
わたしは美優に甘えすぎてはいないだろうか。
出会った頃から可愛い雰囲気の変わらない美優。
私服のワンピースのスカートとひらりと動かしながら、笑った。
「今日場内たくさんもらっちゃった~!
いつでもいますよって言ったら今度指名で来るって言ってくれるお客さん多くてね~!」
「うんうん~!」
それでも美優の力が、今の七色には必要だ。
経験があり、場の立ち回りが上手なキャストは、何人だって欲しいところ。
それにレギュラーで入れば美優の人間性をかって本指名も今よりずっと増えるだろう。
「ね!いま綾乃に連絡したら綾乃とはるなも合流するって!
トリガー誘っちゃっていいかな?」
「もちろん!」
「4人で集まるとか久しぶりだね~!!
あ、さくら」