【完】さつきあめ

「涼くん、かっこいい、惚れそう」

「すんません。綾乃さんタイプ好きじゃないんで。こってこてのキャバ嬢は元カノでもうお腹いっぱいっす」

冗談を言いながら、2人は笑う。

「涼くんもこういうのがいいの?」

綾乃が笑いながら、わたしを指さす。
あたし?!そう思いながら涼の顔を見ると、うーんと首をひねる。

「さくらとはすっげー話してて楽しいし、気が合うし、一緒にいて楽だからなー。
まぁ、光って奴ともおっさんって奴とも上手くいかなかったら俺のところへどうぞって感じ?」

「は?!涼何言ってんの?」

「あらー、さくらモテモテね。涼くんいいじゃない。王子様系で喋らせると毒舌って光と朝日のいいとこどりね」

「綾乃ちゃんまで冗談やめて!」

「へ?俺結構さくら好きだよ?やっぱり一緒にいて漫才みたいに過ごせる人間って大切だと思うし」

「あたしも涼が好きだけど、涼の好きもあたしの好きも友達以上には発展しない好きなの!」

わたしが力説すると、やっぱり2人は顔を見合わせて笑った。

分かち合える、と何度思った事だろう。
余計なしがらみもなく出会ったから、それはどこまでも楽しくて、気楽で、優しいもの。
同じ夜の仕事をしていて、こんなに気の合う異性はどこにもいない。
もしも光よりも先に涼に出会っていたら、わたしは涼を好きになっていたかもしれない。
でも、わたしは…。

< 554 / 598 >

この作品をシェア

pagetop