何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
私は一瞬ほっとしたけれど、電話先から聞こえたのは予想外の声だった。


『ーーもしもし?』


不安そうにそう言ったのは、上品そうな女性の声だった。恐らくお母さんくらいの年代の人だろう。

掛け間違えたかとスマホの画面を見たけれど、表示されている名前は悠だった。


「あ、あの……中井悠くんの、スマートフォンですよね……?」


恐る恐る尋ねると、ややあってから女性がこう答えた。


『ーーええ。私は悠の母です。あなたは悠のお友達?』


少し震えたような声に聞こえた。私の中の不安が増大する。

本人ではなくて、彼のお母さんが電話に出る状況。そしてお母さんの不安そうな声音。嫌な予感しかしない。


「は、はい! 悠くんとは、待ち合わせをしてて……。あ、あの! 悠くんに何かあったんですか!?」


恐怖に押しつぶされそうになりながらも、私は必死に悠のお母さんに尋ねる。

ーーそんな私の問いに対する返答は。
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