何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。




病院へ向かっている途中、ポケットに入れていたスマホが震えた。悠のお母さんからの連絡かもしれない、と画面を見たけれど、詩織からの着信だった。

詩織には、状況を説明しておいた方がいい気がする。私は走りながら、通話ボタンを押した。


『あ、桜ー? 明日のレポートのことで質問なんだけど……』

「ごめん! 今それどころじゃなくて!」


当然だけれど、この危機的な状況を知らずにのんびりと話し始めた詩織。私は早口でそれを遮る。


『え? どうしたの……?』

「悠が! 交通事故に! 今運ばれた病院に向かっているの!」

『ええ!? 事故!? 大丈夫なの!?』

「わかんない! とりあえず、向かっ、てる!」


走りながらなので、息を切らしながらの言葉になってしまった。肺が苦しいけれど、私はできるだけ短い言葉で簡潔に伝えた。


『な、なんかまだよくわかんないけど! とにかく状況がちゃんと分かったら教えてね! わたしが出来ることなら何でもするから!』


しっかりとした口調で、頼もしいことを言ってくれる詩織。ほんの少しだけど、抱いていた不安が解消される。
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