何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「悠くんは……とっても優しいですよ。昔と変わっていないと思います」
トラ子の飼い主が見つからなくて困っていたときに、一緒に世話をしてくれた。
財布を盗んだ犯人だと決めつけられた時に、私を一切疑うことなく信じてかばってくれた。
トラ子がひどい怪我をしておろおろする私に、適切な指示をしてくれた。
そして、私に恋をする甘い幸せをくれた。
私はこの短期間で、何度悠の優しさに救われたのだろう。
「ーーありがとう。桜ちゃん」
「いえ……」
お礼を言いたいのは私の方だった。私は悠がいなかったらきっといまだに、たまに詩織と話す以外は孤独に過ごすことしかできなかっただろう。
ーーそんな風に、悠のお母さんと私はいろいろ話をし、だいぶ打ち解けられたのだけれど。
私が病院に着いてから4時間以上が経ち、外は暗くなってきたというのに、いまだに悠は目覚めなかった。
「なかなか起きないわね、悠」
「ーーそうですね」
「お医者さんの話では数時間で目を覚ますとのことだったけれど……」
不安げな悠のお母さんの言葉に被さるように、パタパタと慌ただしい足音が病院の廊下に響き渡った。
足音はどんどん大きくなり、それを鳴らしていたらしい主が私たちの眼前に現れた。