何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
と、私がいまだ目覚めない悠に思いを馳せていると。


「しかし、また起きる気配はないようだね、お母さん」

「ーーそうね。お医者さん達も何も言ってこないし」

「それなら、桜さんは1回お家へ帰った方がいいんじゃないかい? もう外も真っ暗だし、女の子が遅い時間まで出かけていたら、家の人も心配するだろう」


悠のお父さんの優しい気遣いが、伝わってきた。悠のお母さんも、心配そうに私を見ている。


「え……で、でも……。私、悠くんが起きる時に、一緒にいたくて」


2人の優しさは嬉しかったけれど、大変な目に遭っている悠のそばに居たかった。

そして彼が目を覚ました瞬間を、笑顔で迎えてあげたかった。


「ーー桜ちゃん。悠の怪我はお医者さんの言っている通り、大丈夫よ。それに私、悠に何かあればあなたに逐一連絡するわ。だから本当に帰った方がいいわよ。うちの息子のために、よそ様の娘さんを遅くまで留めるわけには行かないもの」


私を諭すような穏やかな口調だったけれど、悠のお母さんの言葉には、強い想いが込められているのを感じた。

確かに、いつ悠の目が覚めるかはわからない。もしかしたら、日付をまたいでしまう可能性だってある。さすがにそんな時間まで、家族ではない私がここにいるわけにはいかない。
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