何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
つまり、ほとんど証拠なんてないということになる。


「ね、ねぇにーちゃん。いつから美香と付き合ってたの? 俺知らないんだけど」


悠の弟が、おずおずと尋ねた。詩織と美香との殺伐としたやり取りに、気後れしているようだった。悠は困ったように眉尻を下げる。


「ーーいや。そのこともちゃんと覚えてなくて。目が覚めた時に、美香にそう言われたんだけど。まあ、昔から仲良くしてたから、そうなのかなって……」

「ふーん……」


悠の答えを聞き、彼の弟は気のない返事をした。あまり納得いっていないようにも見える。

ーーこれまでの経緯から考えると。

もしかしてツインテールの子ーー美香ちゃんは、悠が事故のショックで記憶があやふやになっていることにつけ込んで、彼女の位置におさまろうとしているのでは……?


「そんなことあるはずないよ! なんで桜のこと覚えてないの!? 彼女なのに!」

「ーーごめん。本当に覚えてなくて……」

「だから、その証拠を持ってきてよ。嘘なんでしょ?っていうか、仮に彼女だったとしても、悠が忘れちゃうような彼女なんて、あんまり好きじゃなかったんじゃないの?」

「はあ!? 何それ!」


美香ちゃんの挑発に、詩織が憤怒に駆られたような顔をする。そした今にも美香ちゃんに飛びかかりそうな勢いで、詰め寄った。

ーーすると。
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