何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
病室でもそうだったけれど、詩織はまるで自分の事のように、美香ちゃんに大して怒りを覚えていてくれるようだった。

頭が真っ白になって、何も言えない私の代わりに、美香ちゃんを問い詰めてくれた。


「ーーありがとね。詩織」


よく考えると、詩織は私と悠が恋人らしく振舞っている姿を見たことがないのだ。

彼女は、私の「悠と付き合っている」という言葉のみで、それを信じてくれている。


「え、何が?」

「うん、さっき美香ちゃんにいろいろ言ってくれたこと」

「えー! だって腹が立ってさ! 頭に血が上っちゃって。……ってごめん、私当事者でもないくせに、中井くんや彼の家族の前で興奮しちゃって。今考えたらやばい奴じゃん、私……」


詩織はバツ悪く笑って言う。

ーー当事者じゃないのに、我を忘れるくらい怒ってくれたから、感謝してるんだよ。

そう思った私が、再度詩織に感謝の言葉を言おうとした……その時だった。


「あの、お姉ちゃんたち……。ちょっと、いい?」


声変わり前の、可愛らしい少年の声がベンチの後ろから聞こえてきた。振り向くと、そこにいたのはーー。


「あ……悠の弟、だよね?」


私の言葉に彼はおずおずと頷く。先程病室にいた、ミニマムになった悠がそこにはいた。


「ちょっとお姉ちゃん達に話があるんだけど、この後時間ある?」

「え……? 話って?」
< 161 / 256 >

この作品をシェア

pagetop