何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
私が尋ねると、なぜか彼はあたりをちらちら見てから、こう言った。


「さっき、美香ともめてたことについてだよ。彼女とか、そうじゃないとか」

「ーー! 君は美香って子が中井くんの彼女かどうか、本当のことを知ってるの!?」


私が何かを言う前に、詩織が興奮した様子で悠の弟に詰め寄った。

すると彼は顔をしかめて、シーっと静かにのポーズを取る。


「ちょっと静かにしてよ。美香のお母さんも病院に来てるんだから。聞かれちゃまずいんだよ、俺の立場的にさあ」


こまっしゃくれた口調で悠の弟が言う。小学校高学年くらいのようだが、どうやら年齢よりも大人びているようだ。

詩織は素直に申し訳なさそうな顔をした。


「ご、ごめん。つい気になっちゃって」

「それで、何を話してくれるの?」


声をひそめて悠の弟に尋ねると、彼は再びあたりを見回してから、こう言った。


「ここだと今日は俺の親戚がいっぱいいて、あまり話が出来ないから……。2人とも、今から俺ん家に来てくれない? 今なら誰もいないはずだから」

「俺ん家って……」


彼は悠の弟だ。その彼が俺ん家ということは、悠の家ということなる。

トラ子を入院させた日に行ったあの家だ。ーー悠と付き合い始めた、あの場所。
< 162 / 256 >

この作品をシェア

pagetop