何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
久しぶりに再開したトラ子は、一回り大きくなっていた。野良だった頃よりも毛がツヤツヤしていて、目もぱっちりしている。

それだけで、中井家でトラ子が可愛がられているのが私にはわかった。


「あ、この子が中井くんと桜が世話していた猫ちゃん?」

「うん、トラ子って言うんだ」

「かわいいねー! 桜に懐いてるみたいだね」

「ーーそうかな」


トラ子は私の事を、ちゃんと覚えてくれているようだった。喉をゴロゴロ鳴らし、私の足に何度も頬をスリスリしてくれる。

悠は、トラ子のことは覚えているのかな。

ーー私と一緒に、飼い主を探したんだよ。病院にも一緒に連れて行ったんだよ。

私とのトラ子の思い出も、忘れてしまったの?


「お待たせ、はい」


悠とトラ子を一緒に可愛がった思い出を蘇らせ、泣きそうになっていると、奏くんが私達の飲み物を持ってきてくれた。


「ありがとうね」

「いただきまーす」


私は麦茶を、詩織はオレンジジュースが入っているグラスを手に取る。

喉は乾きを覚えているのに、1口飲んだらもう飲む気がなくなってしまった。ショックで、飲食物をあまり受け付けない状態になってしまっているらしい。
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