何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「ーーそれでさ、さっき言ってたことなんだけど」

「う、うん」


詩織が身を乗り出して、神妙な面持ちになった。気力のわかない私は、ソファの背もたれに身を預けたまま耳を傾ける。

しかし、奏くんの次の言葉を聞いて、私は驚愕させられる。


「美香の方が嘘をついてるんでしょ?」

「ーー!」


奏くんははっきりとそう言った。私をじっと見つめて。私は思わずソファから背中を浮かせ、彼の顔を覗き込む。


「ど、どうしてそう思うの!?」

「奏くんは、桜の方が彼女だって思ってるってこと!?」

「ーーうん。実は俺、ちょっと前に聞いてたんだ。にーちゃんから、クラスメイトの彼女ができたって」


真剣な面持ちで言う奏くん。

悠は誰にも私との関係のことを言っていないのかと思っていたけれど。

ーー仲のいい弟には話していたということか。


「美香は学校は違うから、彼女なわけないし。ーーっていうか、兄ちゃんが美香と付き合うのは、たぶんありえないんだよ」

「どういうこと……?」


何がありえないのかわからなくて、私は眉をひそめて尋ねる。すると奏くんが少し気まずそうな顔をした。


「兄ちゃんは、美香のこと……まあ、嫌ってはないだろうけど、付き合いたいとか絶対思ってなかったもん。今までは彼女がいなかったから、美香に誘われてたまに遊んだりしてたけどね」
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