何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「なんで、中井くんがあの女と付き合いたいって思ってなかったって、奏くんにはわかるの?」


美香ちゃんをあの女呼ばわりは、従兄弟の奏くんの前じゃまずいんじゃないかと思ったけれど、彼は詩織のそんな言い方を気にした様子もなく、淡々とう答えた。


「だって、美香はずっと兄ちゃんに付き合おうって言ってたけど、兄ちゃんは適当に逃げてたからさ。好きならとっくに付き合ってるはずだよ。美香のことは妹みたいに思ってるんじゃないかなあ。だから、さっき美香が「私が悠の彼女」って言った時に、俺「は?」って思ったんだよね」

「ーーじゃあやっぱりあの女は、中井くんが桜のことを忘れてるのに付け込んで、彼女の座になろうとしてるってこと……?」


簡潔にまとめた質問を詩織が投げると、奏くんはこくりと頷いた。


「そうだと思う。でも美香はさ、悪い子ではないんだ。俺にだっていつも優しくしてくれるし……。だけど兄ちゃんのことが好きすぎて、兄ちゃんのことになると周りが見えなくなるって言うか……。昔からそうなんだよ」

「だからって、こんなことしちゃダメじゃん! 中井くんには桜がいるのに!」

「うん、俺もそう思うよ。ーーだけど、俺の親や美香の親は、美香の突っ走るところなんて知らないからさ。だから美香が嘘をついてるって俺が言ったところで、真面目に取り合ってくれないよ、きっと」
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