何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。



昨日、事故から目覚めた悠は私のことを忘れてしまっていた。

それを知った直後は、深く絶望して落ち込んだけれど、奏くんの応援や詩織の励ましもあり、少しだけ前向きな気持ちを取り戻した私。

それに、悠のお母さんから昨夜来たメールによると、事故による一時的な記憶障害が、恐らく起こっているのだろうとのこと。

珍しいことではないそうで、ほとんどの場合は時間の経過と共に記憶は戻るらしい。

ほとんどの場合ーーということは、戻らない場合もあるという事だが。まあ、後ろ向きな可能性はあまり考えないことにした。

ーー考えてしまえば、私はどんどんどん底へと落ちてしまうから。

記憶さえ戻れば、また悠との楽しい日々が待っている。幸せな時間を取り戻せる。

だって、2人で過ごした日々は確実に存在したのだから。幻なんかじゃないんだ。

花火大会の日に悠が薬指にはめてくれた桜の指輪や、家に飾っているトラ子にそっくりな猫のぬいぐるみを眺めては、私は気を奮い立たせた。

そして、悠の記憶が無いことが発覚した次の日の放課後、私は1人で彼が入院する病院を訪れていた。

見舞いの時に贈るものといえば、花や果物が定番かと思っていたけれど、花をプレゼントする場合は気をつけなければいけないことがたくさんあるらしい。
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