何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
『桜の名前も花だし、記憶を取り戻すのに少しでも役に立つといいなあ』

詩織はそう言って、今朝学校でプリザーブドフラワーを渡してくれた。

昨日の夜に見舞いのお花について相談したばかりで、時間なんてほとんどなかったはずなのに。

ーーありがとう、詩織。

私はプリザーブドフラワーを大切に抱えながら、悠の病室のドアをノックする。少し緊張した。

すると、「はーい、どうぞ」とのんびりした悠の声が、病室の中からすぐに聞こえてきたので、私は恐る恐るドアを開けた。


「ゆ、悠。体調、どう?」


記憶があった頃と同じような気軽さで、私は彼に話しかける。その方が、思い出してくれそうな気がしたから。

しかしベッドに入って上半身だけ起こしていた悠は、愛想笑いを浮かべた。ーーよそよそしさを感じる、他人行儀な笑み。


「あー……。昨日も、来てくれたよね。毎日ありがとう」


そして、無難で当たり障りのない言葉を私に投げる。

なんだかそれだけでもう打ちひしがれそうになった。ーーでも、ダメだ。

悠の記憶が戻るまで、頑張らないと。


「あのね。花、持ってきたんだ。出窓に置いとくね」

「え、ありがとう。ーーへえ、綺麗だなあ」
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