何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
そうだとしたら、私のことも……?


「ゆ、悠」

「え、何?」

「公園にトラ子がいた頃は……私も一緒に、世話をしてたんだよ」


恐る恐る、希望を込めて尋ねる。するとトラ子の画像を微笑ましそうに見ていた悠は、私に視線を合わせた。

そして、申し訳なさそうに苦笑を浮かべた。それを見た瞬間、私の小さな希望が粉々にされる。


「ーーそうなんだ。覚えてないなあ、ごめん。俺と君って、そんなに仲良かったんだねー」


他人事のような口調。取り繕うような微笑み。

事故の前まで、私に向けてくれていた優しい笑顔からは、想像出来ないほどのよそよそしい態度。

仲が良かったところじゃないんだよ。私達は好き同士だったんだよ。

ねえ、もう一度言ってよ。私を好きだって。

悠を責めたくなってしまった。しかし私は唇を噛んで必死に堪える。

彼は何にも悪くないんだ。彼はなくしたくて記憶をなくしたわけじゃない。ーーだけど。

このやるせない気持ちは、どうしたらいいの?


「あれ、あなた来てたんだー」


私が悲痛な気持ちを抱いていると、少し棘のある可愛らしい声が悠の病室に響いた。

声の主は、悠の従姉妹で彼の彼女だと言い張る、美香ちゃん。
< 173 / 256 >

この作品をシェア

pagetop