何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「ーー俺。折原さんのこと忘れちゃってて、サイテーな奴なのに。愛想尽かされてもしょうがねーのにさ。折原さんは優しいよね」


ーー折原さんって、優しいよね。

悠と関わり始めた頃に、教室で、隣の席から、彼にそう言われたことが脳裏に蘇る。

悠は記憶をなくしても、悠だった。優しくて、穏やかで、人当たりが良くて。

私のことを忘れてしまったこと以外、彼は何一つ変わっていなかった。

やっぱり、私は悠のことが好きだ。ーーたまらなく大好きだ。胸が苦しいくらいに。



「あ、あのさ、悠」


そして私は、プリザーブドフラワーの他にも持ってきたお見舞い品を、と恐る恐る取り出す。


「え、何?」

「よかったら……食べる?」


家から持ってきたタッパーを開けて、中身を彼に見せる私。


「卵焼き?」

「ーーうん」


そう、私が持ってきたのは、私が作った卵焼き。もう何度も作っているから、だんだん見栄えも良くなってきていると自負している。ーーまあ、まだ少し形は歪だけど。

付き合う前にも、付き合った後にも、悠はこれを美味しそうに食べてくれた。

いいお嫁さんになれるよ。
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