何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
その度に、「何か困ったことがあったら、お母さんに言うんだよ。お母さんはどんな時でも桜の味方だからね」と私は励ましてくれていた。


「ーーお母さん。私」


私は一旦箸を置いた。


「ん?」

「悠が……何を考えているか、わからない」


もし、私がさっき行き着いた考え通りのことが、悠に起こっていたとしたら。

ーー悠はどうして、私に対してあんな態度を取るのだろう。


「……嫌われちゃったのかも、もう」


泣きそうになるのを堪えて、弱々しく私は笑う。お母さんは神妙な面持ちで私をじっと見たあと、口を開いた。


「お母さんはね、悠くんが何を考えているかはわからないけど」

「ーーうん」

「私の桜が好きになった人だもん。ーーきっと、桜と同じように優しい心を持っているに違いないって思う」

「…………」


ーーお母さんの言う通り。悠はいつだって優しかった。記憶をなくす前はもちろん、記憶喪失になってしまった後も。

だって、私が送った花のすべてを、後生大事に飾っているのだから。
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