何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
だから、このまま離れてしまおうと思った。それで「もう思い出せないから、見舞いに来ないでくれ」と、冷たく突き放したのだった。

ーー正直に自分の事情を話すのが、怖いという想いもあった。なんて臆病で、卑怯な自分。

母さんと奏にも、そんな俺の想いを打ち明けて、協力を仰いだ。母さんは悲しそうに承諾してくれた。

奏は、その時に俺の体の事情について初めて打ち明けたので、かなり動揺していたけれど。

それでも「おねーちゃんには、そうした方がいいよね……」と泣きながら言っていた。

俺の思惑に反して記憶を取り戻したことが明らかになってしまったが、きっと桜は俺のことを嫌いになっただろう。

だって、あんなに「好きだ、ずっと一緒にいよう」と言って、好きあっていた思い出があるにも関わらず、元の関係に戻らず、彼女と偽る美香と一緒にいるような男だ。

ーーきっと適当で軽薄なやつだと思われただろう。

桜は、しばらくの間黙りこくって、無表情で俺を見ていた。

さあ、俺を罵倒してくれ。ーーそして俺から離れて行ってくれ。何も知らないうちに。


「記憶が戻れば、悠は私のところに帰ってきてくれるんだと思ってた。今までは記憶が戻りますようにってずっと願ってたし、例え戻らなくても、また悠に好きになって貰えるように、頑張ろうと思った。ーー私は悠のことが、好きだから」
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